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酸化焼成と還元焼成の違いについて

酸化焼成とは、燃料が完全燃焼するだけの十分な酸素がある状態で焼かれる場合の焼き方の事であり、それに対して還元焼成とは、酸素が足りない状態でいわば窒息状態で燃焼が進行する焼き方を言う。すなわち不完全燃焼になるので、極端な還元焼成の場合は、煙突からもくもくと黒い煙が発生する。適度な還元焼成ならば、もくもくとは黒い煙は出ないものの、排ガスとして一酸化炭素が少なからず排出される事になる。
普通の電気窯では、ほとんど一酸化炭素は排出しない酸化焼成になる。ガス窯では、酸化焼成といえども、実際は多少の一酸化炭素(CO)が排出される場合もあるが、CO濃度が2%以上では、酸化焼成から逸脱する。(注1)

一方還元焼成とは、CO濃度が実際的には4%以上の場合の焼成になるが、特に8%以上になれば強還元焼成と言ったりする。黒い煙をもくもくと出すのは、CO濃度が10%以上を超えた場合の事である。

さて、焼成雰囲気が酸化焼成か還元焼成かで焼き物の色が激変する。たとえば、織部の緑色は、酸化では緑であるが、強めの還元焼成をした場合は正反対色の赤になる。

酸化鉄を2%程度含む鉄釉では、酸化焼成では黄色の黄瀬戸釉、還元焼成では青の青磁釉になる。陶器の素地色も酸化焼成では肌色であるのに対して、還元焼成では鼠色になる。(注2)このように焼成雰囲気を自在に操る事が、陶芸の醍醐味であるという人もいる。

最近は、電気窯でもプロパンガスバーナーで炎を窯に引き込む事により還元焼成が可能である窯もある。しかし還元焼成を繰り返すとヒータ線を早く痛めてしまう事がある。

磁器を焼く高温還元焼成炉はもっぱらガス窯となる。ガス圧を高く設定し、煙突へ逃げる排ガス量をダンパ(煙突の通り道を遮蔽する板)で絞ると必然的に酸素が窯の中に入って来なくなり還元焼成状態になる。

しかし、酸素があって初めて燃焼反応が起こり温度が上がるのであって、いくら燃料であるガス圧ばかり高くしても温度は上がらない。酸素を少しづつ入れる事により窯温度は少しずつ上がっていく。

ガス圧と微妙な酸素供給量の調節により還元焼成が遂行される。そのテクニックが陶芸のおもしろさであり、焼き方しだいで様相が変わってしまう陶磁器を「焼き物」というのはまさに焼成の妙を表した呼称と言える。

注1)酸素(空気)を入れすぎると、窯の炉壁に熱が行き渡らないうちに煙突から高温ガスが出て行ってしまうので、エネルギーのロスになる。そして炉内の温度分布が悪くなる。従って、酸化焼成であっても過剰な空気は控えたい。

つまり、炉圧をある程度保つ必要がある。負圧になっては、煙突の引きが良すぎて温度が上がらない。還元にならない程度に炉圧を上げると、勢いCOガスが発生する事もある。

また、天候や特に風の強い弱いなどの変動条件により、窯圧は常に変化する。
そのため、還元になったり酸化になったりして所謂「酔う」状態が起こり、酸化焼成と還元焼成のどっちつかずのムラのある焼き上がりになる事がある

また、CO濃度は測定場所によって違ってくる。上記の記述は、自然吸気の単独窯の場合の事で、エアーブロアー付のバーナーの場合や、トンネル窯の場合は想定外です。

注2)灰色になるのは、冷却時も還元雰囲気のまま1000度以下までおろした場合である。一般的な、最近の倒炎式のガス窯では、還元焼成と雖も最高温度で焼成を終えたとたんに酸化状態にさらされる場合が多い。(バーナー口を塞ぐ事をしないため)そうすると、鉄を含んだ陶器の素地表面は赤茶色になる。

しかし、緻密な素地の場合はその色は素地の表面だけであり、内部は灰色になっている。がさがさとした陶器素地の場合は、無釉部のハマの部分はガス(酸素)が浸透して赤茶であるのに、釉薬がかかる上部の断面を見ると灰色になっている事がある。

古陶器の素地の断面を見ると、同じ素地であるにもかかわらず、断面色が異なっている場合がある。昔の坑窯では、焼成終了とともに焚き口・煙突口を泥で密閉した場合もあったようだ。つまり、冷却還元焼成という状況になった場合も少なからずあったに違いないと推測する。

現代の焼成のように、キチンと酸化焼成・還元焼成という区分けは難しい。薪ををくべると超還元焼成状態になり温度が上がらず、しばらくして焚き口を開けると酸化により温度が急上昇する、そんな、還元と酸化状況が極端に交互して焼成がなされたと思われる。そして冷却条件も加味されるので、昔の焼成方法は、実に複雑であったと言わざるを得ない。

いまでも、登り窯や坑窯を好んで使う陶芸家がいるのは、単に灰かむりを期待しただけでなく、そんな複雑な焼成条件が醸し出す微妙な古の色触を愛でた感覚に因るものであるのだろう。

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