トップ 病院紹介 診療室より 平成26年度市広報掲載分 癌治療と外科手術

癌治療と外科手術

健康ガイド 診療室から 今回の先生

院長補佐兼外科部長兼麻酔科部長 伊藤 昭宏

私が医師として働き始めてから30年以上になります。この間、外科医師として多数の患者様の癌治療に携わってきました。癌治療がどのように変わってきたのかを自分なりに考えてみました。
私が医師になりたての頃はちょうど早期胃がんの診断と治療が確立された頃で、同時に胃がんの2群郭清による治療が確立した時期でもありました。2群郭清というのはリンパ節に番号をつけて原発巣の癌に近い部位のリンパ節から1群、2群、3群、4群と順番を付けて2群以上のリンパ節を合併切除する術式のことです。日本が世界に先駆けて発信した癌治療で、従来の郭清を行わない切除に比べ格段に予後が改善するとのことで外科医は皆勇躍して臨みました。胃がんのみならず、食道がん、大腸がん、肝臓がん、すい臓がん、乳がん、肺がん、他の領域の癌にもこの2群郭清の考えが応用され、病期が進めば進むほど切除範囲を広げ、他臓器の合併切除も辞さないという手術も行われました。
転機が訪れたのは1990年ごろでした。欧米発の乳がん治療における縮小手術の登場です。当初の拡大手術から縮小に縮小を重ね、最近では乳腺部分切除と所属するリンパ節を切除するだけの手術まで行われるようになりました。その切除量はかつての10分の1ほどでしょうか。この治療を可能にしたのは、有効な抗がん剤の開発と放射線治療でした。この流れを受けて他の癌にも縮小手術の波が起こっています。リンパ節郭清もかつては範囲を重視していたのが今では個数を重視するようになり、また、合併切除も術後の機能予後を考えるようになり、最小限の切除範囲にとどめるようになってきました。
癌の治療成績が向上しているといわれますが、そのもっとも大きな原因は早期発見・早期治療によるものです。新しい抗がん剤の開発により生存期間の向上には貢献していますが、固形がんでは治癒に至らないのが現状です。まだしばらくは手術療法が癌治療の主たるものになりそうですが、抗がん剤治療や放射線治療など他の治療法と組み合わせることで、さらなる治療成績の向上を目指したいと思います。

平成26年9月1日号広報ときより

このページの先頭へ