焼き物研究

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ページ番号1002185  更新日 2023年1月25日

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夏休みの科学研究で、釉薬についていろいろ実験しています。その結果いろいろな疑問がでてきました。多くの人にメールを送り質問しましたが、誰からも返事が返ってきません。これでは、研究を完成させることができなくて困っています。どうかよろしくお返事をお願いします。

Q1、長石・陶石・石灰石・珪石を使って透明釉を作るのには、どんな割合で作ってみるのが良いでしょうか。

Q2、これらの原料の他にどんな原料を使って透明釉を作ることができますか。

Q3、釉薬と粘土(素地土)の原料は違うのですか。

Q4、長石50、陶石4、石灰石40、珪石6という割合で釉薬を作ってみたら、つやがなくざらざらした釉薬になり、しかもひどくテストピースが変形してしまいました。素地が変形するのはなぜですか。

さて、焼き物の原料で、石灰石(CaCO3)や、珪石(SiO2)は、だいたい95%以上の純度があると考えてよいでしょう。しかし、長石(K2O or Na2O・Al2O3・6SiO2)、陶石(長石、粘土、珪石を程良く含んでいて磁器坏土の成分とほとんど同じ成分を持つ石)というのは、かならずしも純度(あるいは成分)が決まってはいません。

例えば、福島長石は、長石分としては7割弱で、3割分の珪石分を含みます。また、インド長石などは、95%以上の長石純度があります。どの長石を使うかによって、調合は、変わってきます。また、透明釉といっても、その調合は、1つではありません。焼成温度や、素地の種類によって、いろんな調合が可能なのです。

全く基本的な透明釉の調合を1つ示すとすると、以下のようになります。

純度の高い原料の場合
長石40、石灰石20、カオリン(粘土)10、珪石30%です。

これと同じ透明釉を福島長石で調合すると。
福島長石60、石灰20、カオリン5、珪石15%となります。

(陶石は、長石30%、カオリン(粘土)30%、珪石40%くらいの成分であるので、釉薬に特別必要な原料ではありません。使えないことはないのですが、使わなくても調合できてしまうのです。)

約1250℃焼成で透明釉になります。1180℃以下では、ちょっとざらついてしまいます。
焼成温度を50℃くらい下げたい場合は、亜鉛華(ZnO)を1割程度入れます。

1100℃くらいできれいな透明釉を作るには、硼酸フリット(硼素(B)の入ったガラスの事で市販されてる。)を2~3割入れます。

800℃以下で透明釉を得るには、鉛フリットを使います。(焼成を上手に行わないと、鉛(Pb)が、水に溶け出て来て、健康に良くありません。食器に使う場合は、鉛の溶出検査が必要になります。

この他に、釉薬の原料として、タルク(マグネシウムが入っている鉱物。)ドロマイト(カルシウムとマグネシウムが入っていて石灰と同じ炭酸ガスを出す鉱物。)

土鍋用に、急加熱、急冷しても割れない釉薬には、ペタライト(葉長石:リチウムが入っている長石)をつかいます。

まだまだ、沢山の原料がありますが主なものは、以上の様なものです。使う原料によっって、顔料(焼成して色を付ける絵の具)の色あいが変わってきます。

例えば、タルクを入れた透明釉では、ゴス(コバルト顔料)が明るい青色になります。石灰だけを使った場合では、渋い紺色になります。

また、マグネシウムを入れると、釉(つまりガラス)の熱膨張(温度を上げると延びる性質)を低くするので、素地との膨張率を一緒にする為に使ったりします。

焼成を終えて冷却する時に、釉が素地より多く縮んでしまうと、釉の表面に、ひび(貫入)が入ってしまいます。ひどい時は、茶碗が割れてしまいます。Q4で、素地が変形したとあるのは、その張率が違って、釉と素地が引っ張り合いをした結果起こったものです。また、ざらざらになったのは、長石と石灰という熔かす原料ば
かり使って、熔される原料(ガラスになる素)珪石や、カオリン分が少なかったせいです。

石灰や、長石は、熔かす原料でアルカリ成分といいます。
カオリンは温度に対してガラス状態を安定させる役目があり中性成分。
珪石は、ガラスにされる原料です。酸性成分といいます。
アルカリ成分、中性成分、酸性成分が、バランス良く含まれていると、釉はきれいな透明釉になります。バランスが崩れてくると、ざらざらになったり、不透明になったりします。

素地の成分にも、長石、カオリン(粘土)、珪石が含まれます。磁器では、陶石のところで説明したように、長石30%、カオリン30%、珪石40%くらいの配分になっています。陶器では、長石分が20%以下で、カオリンが、その分多くなり焼きしまりません。また、石灰石は、普通入れません。(熔けてしまうから)しかし低い温度で焼く陶器の中には、白雲陶器とか、ヨーロッパのマジョリカ焼き等には、石灰石が、半分以上入った素地もありますが、その場合は、長石は、少ししか入っていません。
また水を7%以上吸う、気孔を含んだ軽い焼き物になります。
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産地によって、素地の調合が違います。例えば、九州の磁器は、陶石を主体にします。
岐阜県では、粘土、長石、珪石をブレンドをして調合します。ソウ珪といって、長石と珪石の複合物の様な原料を使うのが特徴です。現在では、ニュージーランドや、中国から、粘土類が輸入されています。このように、陶磁器の原料は、自然の原料を特別精製せずに使用します。だから、長石なん%、珪石なん%と、明確に言えない事があります。工場では、10種類以上の原料を混ぜて調合する場合もあります。

ファインセラミックと違って、そこが、面白いところでもあります。調合が、5%くらい違っても一応、焼き物はできてしまいます。だから、産地によって、いろんな、種類のやきもの、釉薬が存在して、その違いが楽しめます。釉薬も、焼き方(酸化、還元)によっても、全くちがったものになります。

例えば、銅の入った釉薬は、酸化で焼けば、緑色、還元でやけば暗い赤になります。
鉄の入った釉薬では、酸化で焼けば、黄色から黒になります。還元では、2%で、青色、6%で、茶色・黒になります。

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